黒水晶

日付が変わる頃、パーティーはお開きとなった。

マイはきらびやかな客室に通され、ガーデット城専属の執事から部屋のことについて色々な説明を受けた。

風呂も済ませ、あとは寝るだけ。

しかし、どうも落ち着かず、ベッドの上に座ったり立ち上がったり…を、繰り返す。

結局、パーティー中はイサやエーテルとゆっくり話せなかった。

マイは始終、カーティスと立食をしたり、人々のダンスを眺めたりしていた。

カーティスから聞いたイサの過去話や、パーティー会場でのイサの立ち居振る舞い。

それらを思い出し、マイは改めてイサが置かれている立場を思い知らされた気がした。

“王子様って、お金持ちでいいとこ育ちに決まってるんだから、もっと優雅でのほほんとしてるイメージだったけど……。

庶民以上に大変なんだなぁ……”


カーティスは、イサが生まれる以前からガーデット城に仕えていたので、イサが、王位継承者として幼少の頃からなみなみならぬ努力をしてきたことを知っていた。

叱られようが自由な時間を奪われようが、次期国王として、イサは厳しい教育を受けてきた。

そのうえ、ガーデット帝国を支えている剣術の技術をも、カーティスの指南によって鍛え上げた。

マイは、カーティスからそういった話を聞いて、やはり、身分の違いを感じずにはいられなかった。

彼女は、ガーデット帝国の要人としてこの城に迎えられたため、執事達も皆、マイに対し丁寧な対応をしていた。

この客室も、一般の客室以上に防衛が行き届いた場所に位置する。

けれど、マイの胸に芽生えた寂しさは膨らむばかりで……。

「はあ……。イサの国に来るの、あんなに楽しみだったはずなのに……。

旅してた時の方が、楽しかった。

イサとエーテル、今頃何してるんだろ……」

しんみりした気分を変えるため、マイはバルコニーに出た。

雲ひとつないまっさらな夜空には、流れ星がキラッと光る。

それは一瞬で闇の中にとけた。

< 144 / 397 >

この作品をシェア

pagetop