黒水晶
「マイ、いつものちょうだい」
「うん!これね。
3日分だよ!」
マイは、老婆·テグレンに、手のひら大の巾着袋を渡した。
「マイ、いつもありがとね。
また、ウチへご飯食べにおいでよ」
「うん。いくよ。
いつもありがとう」
「いいんだよ。あんたは私にとって孫のようなもんなんだから。
もっと甘えてくれていいんだよ」
いつものような会話を交わし、マイは老婆を見送った。
丘の上にある一軒の家。
そこから見渡すと青々とした草原が広がり、その向こうにはオリオン街がある。
テグレンはオリオン街に住んでおり、この丘の上の一軒の家へ、たびたび足を運んでいる。
その理由は、老化によって自力で立つのがつらくなった足を、マイの魔法薬で治すためだ。
この一軒の家で魔法薬を売っているのが、魔法薬の生みの親でもあり、この一軒家に一人で住んでいるマイという少女である。
マイは、今年14歳になったばかりだ。
いつからなのだろう。
マイは物心がついた時からこの家に一人で住んでいたのだ。
その時にはすでに魔法の能力が備わっており、7歳になる頃には魔法薬を作って街の人々を驚かせていた。
そんなマイの素性を知らない街の人々は最初マイを不気味がっていたが、次第にマイの高い魔法能力を認め、頼るようにもなっていった。