黒水晶
「フェルトの魔術でも効かないのか!?」
イサはフェルトに尋ねた。
フェルトは全身に冷や汗があふれ出るのを感じ、
「そのようですね。
黒水晶の力は、魔法使い以外の能力を無効化させてしまうようです……。
このように人知を超えた強い能力を持つアイテムにはたいてい、それを制するアイテムも用意されているはずなのですが、それが何なのか、今は分かりません。
ともあれ、ここは危険です。
ディレット様のことは気になりますが、皆さんを集めていったんここを離れましょう」
と、イサとレイルに指示を出した。
こうしている間にも、事態は悪化していく一方。
全域が爆風にさらされる。
「ああ!」
「わかりました」
イサとレイルが返事をすると同時に、
「うわあぁあ!!」
終始冷静な面持ちだったディレットの悲鳴が、痛々しく響いた。
黒水晶によって放たれる黒い雨が、能力を奪われ弱ったディレットの全身に、容赦なく降り注いでいる。
炭が溶け込んだようなただの黒い水滴に見えるが、それは熱湯と毒薬でできているため、瞬間でディレットの皮膚をただれさせた。
聞いている者の胸をえぐるような悲鳴が響き、見ている者が思わず目をふさぎたくなる光景が広がっていた。