黒水晶
「わかった。そうだよな。ごめん……」
イサは頭を冷やし、テグレンとリンネ、城の人間達を、ここから遠く離れた街外れに避難させることにした。
イサをはじめ、黒水晶の恐ろしさを目にした全員が疑問を持ち、尋ねたいことがたくさんあるという顔をしている。
しかし今は、物事を深く考えている余裕はない。
一刻も無駄にはできない。
家臣に頼み、イサは街の民達に避難命令を下させた。
数分後。集まったガーデット帝国の民達は、自然の色を失った暗い空に不安を覚えイサに質問を浴びせたが、
「いまは避難するのが先です。
全てのことは後で必ず説明しますから、ね?」
と、フェルトにうながされ、指示に従った。
イサも、フェルトのフォローでその場を乗り切ることができた。
崩れたガーデット城。
こんな異常事態だと言うのに、全く姿を見せない国王·ヴォルグレイト。
放浪の魔術師達と手を組んでいるイサ。
ガーデット帝国の民達は、これまでにない異常を肌で感じ混乱状態にあったが、最終的には避難命令に応じた。