黒水晶
マイは“信じられない!”という顔で、
「たしかに、魔法の力は、使い方次第で兵器にもなる……。
でも、魔法使いは私以外にもいるでしょ?
どうして私を選んだの?」
イサとエーテルはうつむく。
しばらく続いた沈黙の後、イサは顔を上げ、
「ごめん、それはマイと共に国に帰ってから、俺の父親が……。
現在のガーデット帝国国王より話すから、ということで、俺達は何も知らないんだ」
「実の息子に隠すほど、重要なことなのかい?」
テグレンは勘ぐる表情で訊(き)く。
イサはうなずき、
「俺も変だとは思う。
でも、国王にも考えがあってのことだと思うし、
魔法使いという種族は、もう、絶滅していると言ってもいいくらいなんだ……。
だからこそ、ルーンティアもガーデットも、マイの居場所を血眼(ちまなこ)になって探した」
「魔法使いが絶滅っ!? 嘘っ!
私がよく読んでた魔法書には、世界には数十人の魔法使いがいるって書いてあったのにっ」
マイは興奮気味に言った。
イサは落ち着いた声色で、
「ああ、そうだ。
マイがよく読んでいる魔法書や、いま世界中に出回る魔法書の多くに、魔女の存在が綴られている。
でも、彼女たちの存在は、古い時代から奇異(きい)の目で見られていたために、人間たちに恐れられ、ほとんどが虐殺されてきたというのも事実。
今の時代にはそのことを知る者が少ないために、魔女の存在が語られた書物だけが多く残ってる。
大昔の魔法書には、頻繁に魔女狩りが行われていたという歴史が色濃く残っているはずだよ……」
マイは衝撃のあまりうつむいて、
「そうだったの……」
と言うのが精一杯だった。
イサはそんなマイを心配げに見つめつつも、話を続ける。
「人間は何の能力も持たない者ばかりだが、俺やエーテルみたいに魔術や剣術を学べは、本来の人間以上の力を使えるようになる。
ただ、代々引きつがれていたとはいえ、魔術や剣術は歴史上は目新しい術だ。
反面魔法は、人間がこの世に誕生する以前からあったと言う科学者もいるほどに、強く、神秘性がある」