黒水晶
フェルトは、出会った頃よりずいぶん柔らかい態度になった。
「フェルトって、前に比べるとかなり優しくなったよな。
最初は、俺のこと嫌ってるんじゃないかと思ってた」
「えっ!? それは正気の発言ですか??」
フェルトは落ち着きを失う。
「私はあなたを嫌いになった覚えはありませんよ。
少々バカで短気なところも、愛くるしいと感じます。
弟ができたみたいで」
「ありがとう……。弟みたい、か……」
珍しく言い返してこないイサを見て、フェルトは肩をすくめた。
「何を落ち込んでるんです?
調子が狂うじゃないですか」
イサはうつむいて歯をくいしばった。
「……俺は、エーテルだけじゃなく、ずっと一緒の城で暮らしてきたリンネの気持ちすら知らなかった。
リンネがイブリディズモとして生まれた自分を嫌がってるとか、魔法使いに偏見を持ってるってことも……。
もしマイを探し出せたとして、そんな俺がマイを支えていけるのかな?
俺がこんな奴だから、マイはここを出て行ったのかもしれない……」