黒水晶
フェルトは皆に向かって上品に一礼すると、マイに向けて言葉を続けた。
「この世の人間全てを否定するつもりはありませんが……。
人間とは愚(おろ)かな生き物。
自分より強い者に憧れ服従すると同時に、恐れをも抱く。
力のない人間は、まず、恐れの対象を罵(ののし)り、次第に排除しようとする。
そういった人間の愚行(ぐこう)が、過去に幾多(いくた)の魔女狩りを起こさせたのですよ」
マイは目を潤ませ、
「フェルトさん……。
あなたは、人間が嫌いですか?」
「嫌いじゃありません。むしろ好きですよ。
でもね、怖いと思うことは多々あるんです。
自分の身を守るために、平気で他人を傷つけ亡くすことをできる部分など、ね……」
フェルトは今までに見せたことのない暗い瞳を伏せた後、イサとエーテルの方を向いた。
「君たちは、まだこの魔法使いの子に話してないことがあるのでは?
それを話さずに味方につけようなんて、ちょっとムシが良すぎませんか?」
フェルトは非難の色を瞳に浮かばせている。
「フェルトさん。あんたさっきから、何が言いたいんだい?」
テグレンはイサとエーテルを気遣うようにそう尋ねた。