黒水晶

コエテルノ·イレニスタ城に戻ったテグレンはリンネの部屋に直行したが、彼女の姿はなかった。

胸騒ぎがして、近くを通りかかったイサ専属の青年執事にリンネの居場所を尋ねる。

「リンネ様は、イサ様の寝室にてフェルト様とお話してみえます」

「話してるって、姿を消したマイのことについてかい……?」

テグレンは執事との距離をつめた。

彼は端正な顔を1ミリも動かさなかったが、数秒後にやや瞳を伏せ、

「会話の内容は存じ上げませんが……。

さきほど私が朝食をお運びした時、お二人とも、大変深刻なご様子でした」

「ありがとう……!!」

テグレンは、イサの寝室に走った。

生誕したばかりの城とはいえ、通路を駆けるなんて行儀が悪いと分かっていたが、彼女の足は止まらなかった。

< 369 / 397 >

この作品をシェア

pagetop