黒水晶
エーテルは穏やかな目で、
「今は犬でもいいじゃない。
必要となれば、国に反論したらいい。
あなたも私も、国のために尽くす以前に、自分が自分であるために、それぞれの術を鍛えてきたのだから。
これまでの行いを恥じたり、今の自分を卑下(ひげ)することはないわ」
「エーテル……。
そうだよな。
……ありがとう」
そんな二人の様子を見て若干(じゃっかん)疎外感を覚えつつも、マイは笑顔で、
「とりあえず、進もっ。
イサたちの国に、向かわなきゃ」
と、明るく言った。