黒水晶
5‐1 孤独と自由
不思議と、何も起こらない旅だった。
旅立ったばかりの頃、様々な敵から襲撃を受けたのが嘘だったかのように、穏やかな時間が流れている。
青い空に流れる雲はどこまでも白いし、見渡す限り広がる草原にも、優しい風が吹いている。
世界が自然のバランスを崩していること。
イサ達の国から連絡がないこと。
それらは非常に気がかりだったが、こうしてマイを無事に保護できていることは、イサとエーテル、そしてテグレンにも安心感を与えていた。
そんな、ある夜のことである。