黒水晶
「イサと仲良くしてるあんたを見たら、両親もきっと喜ぶよ」
テグレンはそう言い、しんみりした空気を一掃(いっそう)するようにマイの背中を叩いた。
「わっ、私は別に、イサのことを恋人だなんて思ってないよっ!
今はただ、護衛のためにそばにいてくれるだけだし!」
「はっはっは、赤くなって。
この間まで、赤ん坊と何ら変わりないくらい幼かったのに、マイもそんな年頃になったんだね。
若いっていいね~」
テグレンは茶化すように笑ったあと、フッと寂しそうな瞳になった。
「……マイが本当の両親に会えるのを、私は喜ばなきゃいけないのにね。
ホントのことを言うと、寂しいもんだよ。
いつか、マイと別れなきゃならない日がくるなんてさ……」
「テグレン……」
「ごめんよ。いい年して、子供みたいなワガママを言ったね。
マイは本当の両親の元で暮らすべきさ。
わかっちゃいるんだが、切ないねぇ……」
テグレンの気持ちを知ったマイは、きっぱりとこう言った。
「テグレンはもう、ただの『近所の人』じゃないよ。
私にとって、身内同然!!
たとえ本当の親に会える日が来ても、それは変わらないもん」