黒水晶
6 本当の目的

6‐1 魔術と自然オーラ



マイ達の旅が始まってから、二ヶ月が過ぎた。

敵からの攻撃もなく、マイたち一同は平和ボケしそうなほどに穏やかな時間を過ごしていた。

それでも、イサやエーテルは、ある程度辺りを警戒し慎重に歩を進めている。


遠目に山。

見渡す限りの草原。

穏やかな昼下がり。

イサは腰に携えた剣を鞘(さや)から抜いたり出したりを繰り返し、言った。

「これだけ何もないと、本来の目的を忘れてしまいそうだな」

エーテルも神妙な顔でうなずき、

「そうね。こんなに何もないと、かえって怪しい気がするわ。

もちろん、マイの身に何も無いのはいいことなんだけど」

テグレンは周りを見回し、

「アハハ。あんた達の役割はマイの護衛だったもんね。

こんなに何もないんじゃ、剣術や魔術を使いたくてウズウズしてるんじゃないのかい?


にしても、ガーデット帝国とやらは遠いんだね。

あんたたちの国には、馬車くらいあるだろう?

なのになぜ、徒歩移動をしてるんだい?」

テグレンの質問にこたえたのはイサだった。

「馬車はあるよ。

でも、そういったものでは確実な護衛ができないから、あえて歩きでマイを迎えにきたんだ。

馬車だとスキが出来やすいから、刺客にも狙われやすい。


……でも、妙に時間がかかり過ぎてるな。

こんなに長かったか?

俺たちがマイんちに向かう時は、20日程しかかからなかったのに……」

エーテルはその続きを受け取り、こう言った。

「みんなを不安にさせたくなかったから、言わずにおいたけど……。

私たちはいま、異常事態の中にいる。

自然オーラの動きも停滞しているし、外部との連絡もとれない。

調べてはいるけれど、なぜそんなことになっているかが、わからない」

イサは「やっぱりな」と、渋い顔をする。

「エーテル、それ、どういうこと?」

マイは戸惑いがちに訊いた。

エーテルは静かに辺りを見回し、説明した。

「イサも異常を感じていたと思うけど……。

普通、平原には動物、空には鳥が飛んでいるはずなのに、この辺りには魔物はおろか、動物すらいない。

ただ、だだっ広い草原が広がるだけ……。


マイ護衛の任務を受けてから、私達はそれぞれ魔術や剣術の力を使って国と連絡を取り合っていた。

その連絡は、マイと出会った直後に、取れなくなった」

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