黒水晶
マイはエーテルに尋ねた。
「もしかしてそれって、いま世界がおかしくなっていることに関係しているの?
おかしくなった自然の神様たち……。
水の守り神·アルフレドも、私達を襲ってきた……。
普段の神なら、絶対そんなことしないはずなのに。
思えば、あの時から何かが変だったよね」
エーテルはうなずき、深刻な目で、
「魔術なら、異常の原因はだいたい探知出来るのだけど、私の持つ魔術では、異常の原因を突き止めることが出来ない。
今も、様々な自然オーラを操る神にアクセスし続けているんだけど、私からの通信はことごとくはねのけられてしまう。
彼らなら何かを知っているのだろうけど、いま接触するのはかえって危険だわ」
イサはエーテルのほうを見て力強く、
「そんなの、俺がなんとかする。
異常の原因が分かりそうなら、そこから探るべきなんじゃないか?
この異常を放ってはおけない」
マイもそれに賛成する。
「そうだよ。私も出来ることはするから!
この異常事態をなんとかしないと、自然の神達までどうにかなっちゃうかも……」
エーテルは黙って思案していると、久しぶりにフェルトが現れた。
「やぁ。久しぶりですね。
君たち、何をそんなに熱くなってるんです?
楽しい話なら、私もも混ぜてくださいよ」
涼しい表情で近づいてくるフェルトに、イサはあきれた顔をした。
「あいにく、こっちはそれどころじゃない。
お前もこの世界を見て、何か感じただろ?」
「はい。感じてました。
この空間は何者かの魔術によってねじまげられています。
私にわかることは、このくらいです」
フェルトの発言にエーテルは目を見開き、
「この異常は、魔術の力が原因なんですか?
私には感じ取れませんでした……」
「あなたの魔術はホワイト属性。つまり白魔術。
この空間をねじまげた魔術はおそらくブラック属性。黒魔術。
ゆえに、あなたには探知出来なかったのでしょう。
私には、ホワイト属性とブラック属性、両方の魔術が備わっていますから」
マイは目を輝かせ、
「フェルトさんて本当にすごいですね」
と、尊敬の意を込めた。
イサは面白くなさそうに、
「なら、その黒魔術ってやつを何とかしなきゃな。
ここに見える景色は、空間がねじまげられたことによる虚像かもしれないんだから」