黒水晶
フェルトはそんなマイの心情を察し、彼女を労るように口を開いた。
「マイさん、あなたが気に病むことはありません。
イサもそうでしょうが、エーテルも、国にとっての重要人物を護衛する以上、常に身の危険と隣り合わせなのは覚悟しているようですよ」
「でも……」
マイは瞳に涙をたたえ、
「エーテルもイサも、『護衛する人』っていう以前に、かけがえない友達なんです……。
守ってもらってばかりの私で、情けないですけど。
ずっと、歳の近い話相手がいなかった私にとって、二人を失うのはつらいことなんです。
イサとエーテルは、優しくしてくれた……。
嫌な顔せず、話相手になってくれた。
それが、護衛の任務の責任感から出た行動だとしても、私は全然良かった。
だから……」
マイの目からは大粒の涙があふれ落ちていた。
「エーテルに、死んでほしくないんです。もちろんイサにも」
知り合ってからまだ日が浅く、お互いのことを深くは知らなかったが、マイは二人に友情を感じていた。
イサもマイの言葉に感動し、目を潤ませる。
フェルトはマイの気持ちに答えるべく真面目な顔をすると、
「大丈夫です。
私はエーテルを死なせたりはしません」
と言い、手のひらから淡い光を放った。
イサはその眩しさに目を細め、
「その魔術は……!!」
と、口をつぐむ。
ものすごい光の豪雨は視神経を刺激する。
マイも目を固く閉じてしまった。
「くっ……」
フェルトは全身に汗をかきながら、その薄緑色の淡い光をエーテルの体に吸収させた。
その一瞬、一同は目の前が真っ白になるのを感じた。
エーテルのそばにいたテグレンも、初めて体感するその光景に目を白黒させていた。