毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 ここで暮らしたほうが、幸せになれるって。でも両親や友達と会えなくなるっていうのが、私の決心を鈍らせてる。

 私はここで生きていこう。

 信長の傍で生きて行きたい。

 信長を深く愛し、また信長に愛されたいって思う。

「ありがとう。やっと気持ちの整理がつけられたかも。信長様に伝えてくれる? もう私が帰る手立てを見つけなくていいって」

「嫌だね。俺からじゃなくて、直接あんたから、兄上に言ってくれよ。兄上は、あんたからの言葉を待ってる」

 信包は立ち上がると、ニヤッと意味ありげな表情を残して、立ち去った。

 何よ。私の気持ちを気付かせてくれたなら、信長に一声かけといてくれてもいいじゃない。

 私は足を崩すと、痺れかけていた足をマッサージした。

 どうやって、信長に切り出せばいいかな?

















「信包が、お前から嬉しい報告があるはずだ、と儂に勿体ぶった言い方をしてきたのだが、あれは一体なんだ?」

 少し不機嫌面で、信長が私の部屋に入ってきた。
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