あなたを好きになれたから 
「あはは!だよなぁ~。あの頃は、みんな坊主だったもんな。けど、亜子はかわんないわぁ。大事なものぎゅうっと握りしめるとこ健在であんしんした!」

また、須田先輩は
あはは!と笑う。

そう
私と須田先輩はおんなじ中学のバレー部。
私より2つ上で、スゴク面倒見がいい。

「ところで亜子。お前この会社に何のよう?」

「あ、私は会社の先輩に頼まれて、図面を届けに来たんです。先輩はどうしてここに?」

「オレ?俺はこの会社の企画開発で働いてるんだ。」
「うわぁ!そうなんですか!私、橋爪電子部品の営業部で営業事務をしてるんです!」

「じゃあ、いろいろお世話になることもあるかもしれないな。」

「はい!そうですね!でも、心強いですよ?知り合いがいる。なんて!」

「だな!じゃ、亜子頑張れよ!またな」

先輩は、ヒラヒラと手を振りながら歩いて行った。
私はというと…
フロアーを見渡すも、やっぱり会社の先輩の姿はなく…

「もう。。。」
と、ため息をついた時

♪♪♪♪♪
と、メールが来た。

「今、2階の営業部の応接室にいる。悪いけど、図面持って来られるか?」

先輩からだった。


マズイ
急がなきゃ!

急いで階段を上りきり
2階の営業部の応接室を探す。

遠目からでも、あそこじゃないか、と、わかった時、
ドン!
と、人にぶつかって尻餅をついてしまった。

イタァイ。。。

立ち上がろうとしたとき、手が伸びてきて
立ち上がらせてもらった。
「君、大丈夫?」

優しい声。

「あ、はい!すいません!応接室を探して歩いてて、前を見てなくて…ホントにすいません。」

私は、恥ずかしくて、
再度頭を下げて、その場を後にした。

トントン
と、ドアをノックして入ると、
ちょうど打ち合わせ中だった先輩の姿が見えて、
私はようやくお使いを済ます事が出来て
ホッとした。

会社に戻る途中
須田先輩のこと、ぶつかったあの人のことを
思いだし…

「ぶつかったのに、私を立ち上がらせてくれたのに、きちんと挨拶出来なかったなぁ…」

と、独り言を呟いてみた。

まさか
再び、再会出来る日がくるなんて
この時の私は、知る由もなかった。
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