彼女は予想の斜め上を行く
「じゃっ、決定。とりあえず出よ?六時までなんでしょ?」

金本さんの言葉で、いくつかの資料と企画案を手に退社した。



中島先輩と口喧嘩をした原因のひとつでもある徒歩通勤。

それを懲りずにしている女を車の助手席に乗せて、向かった先は………。

「あっ、遠慮なく上がって?」

金本さんの住むアパート。

「おっ、おじゃまします…」

遠慮がちに足を踏み入れる。

「適当に座ってて」

「あっ、はい」

1DKの小綺麗な部屋には、彼女がプロ野球好きなのだとわかるものがいくつか置かれていた。

サインボール。

ユニホーム。

サイン色紙。

球団のキャラクターであるオレンジ色のうさぎのパペット。

「あっ、テレビつけといて?」

テレビの電源を入れると、プレイボール直後のマウンドが写し出される。

「これ、参考になるかも」

ファイルと本を数冊手渡して、金本さんはキッチンへ向かった。
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