彼女は予想の斜め上を行く
『あたし野球観たいから』

金本さんがそう言って聞かないから。

野球を観るためだけに地上波以外の放送局を取り入れたという彼女の自宅で、企画案を練ることになった。

キッチンで夕食の支度をしつつ野球中継に耳を傾ける金本さんを見て、小さな溜め息をつく。

企画案提出までの一週間は毎日ここに通うことになっているのだが…。

俺、我慢出来るかな…。

理性、保てるかな…。



その後、製菓衛生師の他に調理師の免許も持つ金本さんの手料理を食べ終えると、レアチーズの企画案を土台に作業に移った。



「明日は、詳しいレシピを考えよ。あっ、コーヒー淹れるね」

あれから二時間ほどが経過し、時刻は九時をまわり野球中継も終了していた。



金本さんって、やっぱりプロだなと実感。

レアチーズなら、冬の白い雪を連想させられるかも?

そんな漠然とした思いだけで俺が作成した企画案は、彼女の手によって明確なものに形を変えた。
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