彼女は予想の斜め上を行く
「お前は、それでも日本男児かぁっっ!!」
「かっ、金本さん?」
金本さんの瞳は、鈍感な俺でもわかる怒りのオーラを滲ませてた。
「黙って聞いてりゃあ、女々しいことばっかり。イライラする!あたしはあんたの為に野球を見るのすら、やめたの。それを『諦めたくなった』だぁ!?どの面さげて言ってんの?」
野球好きな彼女だが、いざ作業が始まるとテレビの電源はオフにしてくれていた。
自宅とは言え仕事に取りかかるのだから、当然と言えば当然なのかもしれない。
それでも単純な俺としては、野球より自分のことを選んでもらえたようで嬉しかった。
簡単に言ったわけではない。
だからといって、考えに考えて言いましたというわけでもない。
中途半端な気持ちで言った『諦めたくなってきた』という言葉は、地雷になっていたんだ。