彼女は予想の斜め上を行く
部屋の外に追い出されるという突然の猛攻を受け、唖然として立ち尽くす。

猛攻を仕掛けた張本人は、ドアを片手で押さえながら俺を見ていた。

ぶちギレてる彼女は、当然のように怒鳴りつけてくるかと思った。

でも、違った。

意外にも。

静かに……本当に静かな声で言ったんだ。


「簡単に諦めるとか言わないでよ…」


夜も遅いし。

一応、外だし。

近所迷惑だし。

鈍感な俺には、そんな理由ぐらいしか思いつかなかった。

彼女は黙ってドアを閉めた。

パタンッ……と静かな音がアパートの廊下に響き渡る。



閉まったドアの前で黙って立ち尽くすのは。

金本さんを引き留めることが出来なかったのは。

見てしまったから。

今にも泣き出しそうな……それでいて、悔しそうな顔をした彼女の表情を。
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