彼女は予想の斜め上を行く

彼女の想い

俺は、ヘタレだ。

それも正真正銘のヘタレだ。

中坊で初体験に望んだ時は、極度の緊張でムスコが起動せず当時の彼女を幻滅させたし。

今だって惚れた女に怒鳴りつけられ、部屋から追い出される始末。

だけど……。

だけど、これはあんまりじゃないか……?



「ヘタレって、まさにあんたのための代名詞よね~」

そう言って彩さんが人目も憚らずに笑うのは、俺が全てを洗いざらい話したから。

「惚れた女に怒鳴りつけられるとか、ダサすぎる~」

テーブル越しに話す彩さんの声は、そんなに大きくない。

それでも聞いている人は聞いているようで、チラチラと俺に対する視線を感じる。

話すだけでも苦痛だったのに、今度は公開処刑のような視線を浴びる。

『いい加減にしろ』とか。

『もっと人目を気にしろ』とか。

言いたいことはたくさんあるのに、心の中で悪態をついているだけの俺はやはり正真正銘のヘタレだ。
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