彼女は予想の斜め上を行く
不器用故に、仕事に対しては自信が持てなくて消極的な金本さん。

自分で考案することはせず、商品開発課の手伝いに徹していたらしい。

「でも、中島君は知ってたの」

いきなり出てきた俺を打ちのめした男の名前に。

「先輩が?なにを?」

思わず怪訝な顔をする。

「葵がレシピ書き溜めて、家で試作してることを」

「あっ……」

そのレシピに心当たりがある俺は、思わず小さく声を漏らした。

参考になるかもしれないと、金本さんが夕食前に渡してきたファイル。

彩さんは、回想してる俺を黙って見つめた。

「葵にあんたのことをお願いしたのは、もちろんあんたの為。でも、葵のためでもあるの」

共同企画案で能力を発揮させるため。

もっと自信持て。

お前は、立派なパティシエなんだから。

言葉じゃない足りない。

行動でそう伝えるため。
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