彼女は予想の斜め上を行く

誠意の見せ方

俺は、形から入る男だ。

そんな俺の惚れた女に対する誠意の見せ方は、まずは髪型からだった。



―――「……で?どんな感じにしたいわけ?」

大きな鏡に写る俺に、そう聞いてきたこの男は俺の幼なじみ。

名前は、遼生《りょうき》。

美容師を職業としているお洒落な男だ。

「《脱チャラ男》でよろしく」

不機嫌なオーラを全く隠そうともせず俺の髪に触れる遼生に、俺は言った。

「お前態度悪いぞ?俺、客なんだけど」

「お前なんて客の内に入らねぇよ。どこの世界に、定休日の真夜中に押し掛ける客がいるんだよ……」

「残念。日付変更線越えたから、今日は通常の営業日だ」

時刻は、深夜一時近い。

彩さんにヘタレだと馬鹿にされ落ち込んだファミレスでの時間から、一時間近くが経過しようとしていた。

「屁理屈言うなよ」

手に持ったスプレーを俺の髪に吹き付けながら遼生は俺を睨み付ける。

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