彼女は予想の斜め上を行く
あきらかに何か言いたげな表情だったけど。

下手になにか言われたくないから、「そっか」と素っ気なく返事をした。



『ごめんね…。勇人』

最後に会ったあいつの表情が…。

あいつの言葉が…。

頭に浮かんだけど、それを無理矢理掻き消した。



「うしっ!完成!」

遼生の満足気な声に鏡を見ると、軽く変貌を遂げた俺がこちらを見ていた。

こんなに真っ黒くしたのは就活以来だなと思わせる髪色は、漆黒という表現がピッタリだった。

長すぎた襟足は、半分の長さにサッパリとカットされていた。

サイドはほんの少し耳にかかる程度の長さで、ボリュームもだいぶ抑えられている。

それに対しトップは比較的ボリュームがあった。

「トップはワックスでふんわりさせつつ、まとめるように立たせると爽やかに見えると思う」

「こんな感じでさ」

髪に触れながら遼生にアドバイスされて頷いた。
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