彼女は予想の斜め上を行く
通常の代金プラス深夜料金という名目で、俺の奢りにより今度飲みに行く約束をした。

「葵ちゃんの反応、聞かせろよ~」

「気が向いたらな」

知り合いでもないくせに馴れ馴れしく《ちゃん》付けする遼生に、適当に返事をする。

「遅くにごめん。本当にありがとな?」

「ホントだよ」とボヤきながら、遼生は眠そうにあくびをひとつした。

少しでも睡眠を貪りたい俺達は、素早く外へ出た。

店から少し離れた駐車場への道のりで、遼生は言った。

「なぁ。勇人」

「ん~?」

俺は、眠気覚ましに買った缶コーヒーを飲みながら横を歩く遼生を見た。

彩さんと同じような言葉を。

同じような真剣な顔つきで。

遼生は言ったんだ。

「あきらめんなよ?何もかもさ」

「葵ちゃんの反応楽しみだな♪」と、満面の笑みで付け足された。

「あきらめないよ」

俺の決意は、真夜中の駐車場に響いた。



あきらめない。

企画案のことも。

金本さんのことも。

それが俺なりの。



―――誠意の見せ方だから。
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