彼女は予想の斜め上を行く



「大丈夫。大丈夫だ…」

まるで呪文のようにそう呟く俺がいるのは、昨夜追い出されたことが記憶に新しい惚れた女の住む部屋の前。

業務終了後に、車を走らせやって来た。

のだけれど……。

本日もきっちりばっちりヘタレな俺発動中。

緊張したり。

怖じ気づいたり。

なにがどう大丈夫なのかもわからずに、『大丈夫』という呪文を復唱し続けること五分経過。

未だにインターホンすら押せてません…というなんとも情けない状況だ。

「大丈夫。大丈夫だ…」と呟くのを最後に、深呼吸をした。

俺も男だ。

やる時は、やる!

当たって砕けろ!

……ぐらいなつもりで、インターホンを押そうとした時だった。

目の前の扉が、勢いよく開いた。


ガンッ!


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