彼女は予想の斜め上を行く
当たった。

そして、砕けた。

いや、砕けたというのは嘘だ。

でも、砕けてもおかしくないぐらいの衝撃が頭を襲った。

「……………ッ!!」

ガンガンとした痛みに声にならない声をあげ、両手で額を抑えて思わずうずくまる。

すると、頭上から怒声が鳴り響いた。


「てめぇ、どの面下げてきたぁっ!!」


涙目で見上げると、部屋の主である金本葵が俺を見下ろし睨み付けていた。

「何しに来たのよ……」

痛みに悶える俺なんてお構い無しに低い声で言う。



あたし怒ってるんですけど。

機嫌悪いんですけど。

もちろん、あんたのせいで。

言葉にせずともオーラのみでそう伝える女を前にして、蛇に睨まれた蛙のように硬直してしまう。



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