彼女は予想の斜め上を行く
それでもまだ痛む頭でここに来た理由を思い出し、自らを奮い立たせた。

「昨日は、すみませんでした」

立ち上がり、頭を下げる。

短く。簡潔に。

口は災いのもと。

きっと長く喋ると、ボロを出すから。

「俺、諦めません」

顔を上げると、何枚かの紙を渡す。

金本さんは相変わらず威圧的且つ不機嫌なオーラを醸し出しながら、それを無言で受け取る。

「………………」

業務の合間を縫って、考えたレシピ。

金本さんは、黙々と目を通す。

「ダメ」

「へ?」

「全然ダメ。改良の余地あり。練り直し。以上」

一気に喋ると、金本さんは回れ右をして部屋の中に入っていこうとした。

「ねぇ」

唖然としている俺をチラッと振り返り、眉間に皺を寄せて言った。

「入らないの?」
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