彼女は予想の斜め上を行く
例えば。

髪型とか。髪型とか。
髪型とか。髪型とか。

つまりは、髪型とか。

目の前で真面目に作業をしている彼女は、明らかに変貌を遂げた髪型についてノーリアクション、ノーコメントを貫き通している。



「諦めないっていうのは、企画案のこと……だよね?」

唐突にそう言われたのは、コブのできた額を保冷剤で冷やしながらレシピの練り直し作業に没頭している時だった。

「へ?」と間抜けな声を出した後。

『俺、諦めません』という発言を思い出す。

企画案半分。

惚れた女に対する想い半分というのが本音。

「そうっ…すよ?」

それでもそう答えたのは、邪な思いを知られたら今度こそ豪速球が飛んで来る気がしたから。

「…そっか。そうだよね…」

寂しいような。

ホッとしたような。

そんな表情を気の強い彼女がしていることに、鈍感極まりない俺はこれっぽっちも気付かなかったんだ。
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