彼女は予想の斜め上を行く
裕行side
本日、企画案提出日。
開発課内で只今行われているミーティングにて、冬の新商品をいくつか仮決定する。
葵と勇人がどんな商品で挑もうとしているのか俺は全く知らない。
《la neige ラ・ネージュ》
二人が考えた商品名。
「白い雪をレアチーズで表現した濃厚で口溶けのよいケーキとなっています」
勇人の説明にもあるように、フランス語で雪を意味する。
勇人はフランス語なんてからきし駄目なはずだから、葵が考えたのだろう。
レシピは勇人が土台を考え、葵がそれを生かしつつ手を加えたという感じだ。
「長野君の商品を試作にまわそうと思う。どうかな?」
勇人の説明が一通り終わると、新田課長は開発課メンバーに訊いた。
プロのパティシエである葵のレシピの完成度は高かったから、異論を唱える者はいなかった。