彼女は予想の斜め上を行く
昼休みの食堂。
浮き足立っている勇人は、工房から離れられずミーティングに参加出来なかった葵をめざとく見つけて駆け寄って行った。
企画案が仮採用となったことを勇人から聞かされた葵は、嬉しそうに笑ってた。
好きな女があんな風に笑ってくれて嬉しく思う。
でも隣にいるのが彼氏である俺ではなく、葵を隙あらば奪おうとする男だというのはやはり見ていて複雑だ。
そんな状況を仕掛けたのは他でもない自分だと思うと、ますます複雑だ。
なんだか味のしないランチを口にしながら、少し離れた席から二人をぼんやりと眺めていた。
―――業務終了後に、部屋の前で主を待つこと30分弱。
付き合って三年ぐらいたつのに合鍵すらもらえない自分を不甲斐なく思っていると、待ちわびた人物が帰宅した。
「裕行?」
「お疲れ」
アポなしで来た俺を驚いた表情で見る葵に苦笑いしながら、声をかけた。