彼女は予想の斜め上を行く
らしくないのは、百も承知。

自分のことは、自分が一番よくわかってる。

今日の俺には、とにかく余裕がない。

そして強引。

それが何故なのかも、よくわかってる。


不安なんだ。

あいつに葵をとられそうで。

代打のくせして、逆転のタイムリー打たれそうで。

照れくさそうに。嬉しそうに笑う葵は心底可愛くて大好きだけど、あいつにはそんな顔見せないで欲しい。


信じきれないんだ。

彼女として。
一人の女として。

葵のこと信じきれない。
あいつに心が傾いてるんじゃないかって、疑ってしまう。


そんな情けない想いを言葉に出来るほど素直じゃない。

だからと言って、何もアクションを起こさずにいられるほど忍耐強くもない。

嫉妬と疑心に任せ、葵を抱きながら囁く。


「葵…。好きだ…すげぇ好き…」


だから、ずっと俺の隣にいて。

あいつの…勇人の隣にはいかないでくれ。
< 150 / 251 >

この作品をシェア

pagetop