彼女は予想の斜め上を行く
ケーキクラムとは、スポンジケーキを乾燥させ粉末状にしたもの。

《なかない粉糖》とは、水分の多いケーキやパンに振りかけても溶けにくい粉糖。

これらを施すことにより、柔らかな雪の印象を与える。

セルクルは、枠のみで底のない型のことだ。



一通り説明を終えると、試食に移る。

緊迫した口頭での説明とは一転。

試食は和やかなムードで行われた。

金本さん作の《la neige》を試食する会長、社長、役員は真剣な顔をしつつ、笑みを浮かべていた。

これは、イケる!

俺は心の中でガッツポーズをとった。



試食終了と同時に、主に単価についての質問が矢継ぎ早に飛ぶ。

「単価などについては、僕の方からご説明させて頂きます」

そう言って、完璧な男は質問に難なくスラスラと答えていく。

まるで自分の企画案かのように熟知して応答している先輩は、悔しいけどカッコいいし頼りになる。
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