彼女は予想の斜め上を行く
「気に入った。思わず今すぐ売り出したくなるな」

「ありがとうございます!」

三十代前半有名パティシエである社長からの最高な誉め言葉に、頭を下げた。

だけど誉め言葉程度に捉えたのが、間違いだった。

「今季向けのアレンジとかないの?」

この人、本気だ。

本気で、今すぐ売り出したいんだ。

《la neige》は夏を迎えサッパリした物を売り出す今の時期には、口当たりが濃厚すぎる。

今冬に向けてのプレゼン。

夏向けのアレンジは考えていない。

なくても、きっと本採用はされる……はず。

だけど社長がここまで言ってくれるのだから、応えたいのが人間だ。

父親である会長が、更に俺達を焦らせる。

「週末が、商品切り替え日だったはずだ。それまでに、店頭に出せないかな?」

週末に店頭に並べるということは、最低明日までにアイディアを提出しなければ到底間に合わない。



< 158 / 251 >

この作品をシェア

pagetop