彼女は予想の斜め上を行く
「勇人。俺がこの場を繋いどく。その間に資料にもう一度目を通して、アレンジ考えとけ」

機転を利かせた先輩は、俺にそう耳打ちしてきた 。



開発課に移動して三ヶ月弱の自分にアレンジを考えるなんて、到底無理だと弱気になる。

そんな俺を見透かした完璧な男の小さな囁きに、はっとさせられた。

「逆転のタイムリー打つんだろ?あれは、はったりか?」

『俺、逆転のタイムリー打ちますよ?』

駅の改札口で放たれた俺の発言のことを話す男は、不敵な笑みを浮かべてた。



はったりなんかじゃない。

俺は、逆転のタイムリーを打ってみせる。

そして今が、きっとその時なんだ。



資料に素早く目を通しながら思考回路をフル稼働させていると、ある物が目についた。

ファイルの間に挟まったA4サイズの見覚えのない封筒。

「あっ」

中身を見ると、思わず小さな声が漏れた。
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