彼女は予想の斜め上を行く
「勇人、番号もアドも変わってるから、すごく困ったんだけど」

頬を膨らませて、クレームをいれてくる莉緒。

「……ごめん」

腑に落ちないのに、謝る自分がヘタレで宙ぶらりんで嫌になる。



それにしても、遼生の奴め…。

大事な大事な個人情報をよりによって、元カノにバラすとは……。

番号もアドレスも変えて、徹底的に避けて音信不通を演出してきた俺の努力って一体……。

あのチャラい美容師は、《プライバシー》というものを存じ上げないのだろうか?



「ねぇ勇人」

甘ったるい上目遣いで俺を見つめる。

「仕事終わった後、会いたい」

「ごめん。忙しいから……」

「りょう君から、聞いてるもん。今の時期は、ヒマなんでしょ?」

《プライバシーの侵害》

《民法上の不法行為》

あのお喋りな美容師を絶対に訴えてやると心に決めた。
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