彼女は予想の斜め上を行く
「長野君のこと。好きじゃない」
静かに放れたストレートな言葉は、もの凄い球速と球威で確実に内角を深く深く抉ったんだ。
「やっぱり俺なんかじゃ中島先輩に敵いませんよね……」
自嘲気味な薄ら笑いを浮かべながら、金本さんの上から体をどかす。
俺の自虐的な言葉を肯定も否定もせず、上体を起こしてベッドに膝を抱えて座り込む彼女は俯いて黙りこんでた。
一刻も早くこの部屋から出たくて、出入り口に向かって大股で踏み出そうとすると。
「ごめんね…」と小さな声が聞こえた。
「謝るぐらいなら、勘違いさせるようなことしないで下さい……」
彼女に背を向けたまま拳をグッと握り締めて、冷めた声で捨て台詞を吐いて部屋を後にした。
―――ひとり暮らしをするアパートへ帰ると、すっかり酔いが醒めた気がして缶ビールを冷蔵庫から取り出してプルタブを開ける。