彼女は予想の斜め上を行く

『野球もないし、行こうかな』

単純に忘れていたのか。
把握してなかったのか。

思案防止につけたはずの地上波からは、ポツリと呟いてた言葉とは相反する現実が写し出されて思考回路をフル稼働させる。

《ゲーム差わずか1で迎えた首位攻防戦。先発投手は、プロ2年目右腕の………》

アナウンサーから与えられる情報により重要な一戦だと知り、確信する。

彼女が忘れるはずない。
把握してないはずない。
そんな事は有り得ない。

だけど、そこから導き出される事実は……。

もっと有り得ない。



例えば事実を信じて。

また勘違いで。
内角抉られて。
傷付けられて。

そんなことになったら、ビビりでヘタレな俺は今度こそ再起不能になると思う。

だから、大量のアルコールを仰いで目を逸らす。



惚れた女が、野球よりも俺を選んだという事実から目を逸らす。
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