彼女は予想の斜め上を行く
彼女の心
最近、葵の様子がおかしい。
ボーッとしてるというか。
意識がとんでるというか。
心ここにあらずというか。
「おっ、先制したじゃん」
「………………」
「葵?先制したよ」
「……え?あっ、ホントだ…」
今だって、そうだ。
葵の部屋で二人でソファーに座りながら見るプロ野球。
32インチの液晶画面の中では、葵の好きな球団が先制している。
いつもなら……
半強制的にグータッチをさせられたり。頼んでもない球種の解説を語りだしたり。球団のオレンジ色のタオルを喜んで振り回したりするのに。
薄々勘づいてた。
やっぱり、あいつのせいなのか?
野球見てないのも。
割りと無口なのも。
全然笑わないのも。
全部。全部。
あのヘタレでビビりで、素直で一生懸命な後輩のせいなのだろうか。