彼女は予想の斜め上を行く
「本日付けでこちらに移動になりました。長野 勇人〈ながの はやと〉です。よろしくお願いし……」
洋菓子の商品開発課。
今日から俺が働く新たな職場。
第一印象を左右するであろう大事な自己紹介!
……だったのだが、途中で言葉に詰まった。
そして、ある人物に瞳が釘付け。
言葉が詰まったのは、その人に見とれてしまったせい。
「長野君?」
新しい上司である少し髪の薄い中年男性が、不思議そうに声を掛ける。
ハッと我に返った。
「あっ!すみません!よっ、よろしくお願いしますっっ!!」
どもる俺。
あぁ。こんな挙動不審な挨拶にするつもりなかったのに……。
俺の出鼻を挫かれた感が半端ない挨拶にも、温かい拍手は送られた。