彼女は予想の斜め上を行く
「すげぇ……」

彼女の目の前に広がる光景にため息のような声を漏らした。

まるで本物のような百合の花が何本か置かれていた。

「これ、シュガーペーストって言って砂糖で出来てるの」

「やっぱプロはすげぇ…。まるで本物ですもん」

「ははっ。ありがとね♪でもね、あたしなんて全然まだまだだよ?あたし、もともと不器用だから悪戦苦闘ばっかりで……」

少し苦しそうな表情をしながら、話す彼女。

「コンクールに出してもなかなか入賞出来ないし、才能ないのかなぁ…」

その声は少し弱々しくて……。

なんだかそんな風に話す姿は、意外だった。

俺が知っている彼女は、いつもよく通る声と強い意思を感じるような瞳で仕事に打ち込んでいたから。

「あっ。ごめん…。なんだか暗い話しちゃって……」

ハッとして、慌てて俺に謝る。

「いやっ…。大丈夫っすよ?」

少し疲れた表情で謝る金本さんにかける言葉を探す。


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