彼女は予想の斜め上を行く
衝撃
「勇人。今から会いたいよぉ」
元カノ宮下莉緒から電話があったのは、惚れた女金本葵に想いを打ち明けて笑えるぐらい見事に玉砕した翌日のことだった。
失恋して絶賛傷心中というタイミングでの誘い。
肉食系女子には、獲物の状態を逸早く察知する強力な嗅覚でも備わっているのだろうかと可笑しなことを勘繰りたくなってしまう。
「勇人。手つなご~」
うまいこと断ったり、あしらったりするスキルも気力もない俺は、莉緒と会って手なんか繋いじゃったりしている。
街中をまるで恋人かのように二人で歩いてると、今カノ面する元カノは口を開く。
「初めて手繋いだ時のこと、覚えてる?」
「え?…ああ。覚えてるよ…」
絡めた指を嬉しそうに眺めながらされた質問に、まだ二日酔いの気だるさが残る頭を擦り、少し気だるそうに答えた。
高3の夏。
付き合い初めて間もない二人きりでの帰り道。夕暮れ染まる河原の土手沿いの道。
俺から黙って手を繋いだ。