彼女は予想の斜め上を行く
「あの時、勇人の顔真っ赤だったよねぇ~」
「あれは夕日のせいだっつーの……」
「あの時も同じこと言ってたぁ~」
「ねぇ勇人?」
「ん~?」
イマイチ覇気のない声を上げて莉緒を見ると。
俺をからかって笑ってた莉緒の表情が、どこか寂しげで真面目な顔つきにふいに変化した。
「あの頃には、戻れないのかなぁ…」
「……え?」
「勇人ともう一度…一緒にいたいよぉ…」
ヘタレでビビりな俺には、やはり断るスキルと気力がなかったからなのか。
緊張と恥ずかしさで顔を真っ赤にして、莉緒と手を繋いだ高3の俺に戻った気がしたからなのか。
―――それとも……。
涙目で俺を見上げる莉緒が、昨夜の俺と重なったからなのか。