彼女は予想の斜め上を行く
「なに…違うの…?」
親友を扱き下ろす女に尋ねると、より一層食って掛かる声が返ってきた。
「旦那よ!旦那に追い返されたの!」
「塩原に?」
性悪女の伴侶であり、俺の同期でもある塩原公平は開口一番こう放ったらしい。
『帰れ。お前見るからに胎教に悪そう』
元々性悪女を溺愛する塩原は、どうやら既に未来の《親バカ予備軍》になってしまったらしい。
「あんな奴…育児ノイローゼになってしまえ!思春期の多感なお子様の言動に悩まされ、禿げてしまえ!そして、末代まで呪われてしまえ~!」
悪い魔女さながらの呪い文句を吐く元カノに苦笑いしていると、怒りの矛先は何の脈絡もなく突然俺に向いた。
「そもそも裕行もいい加減なこと言わないでよ!」
見に覚えのない言いがかりをつけられて「は?」と思わず声を漏らすと。
葵はとことん気に食わなそうに言った。