彼女は予想の斜め上を行く
「……っぶねぇ」

気付けばそう呟きながら抱き止めてる自分がいて。

咄嗟にプレゼン前日にも似たようなことがあり、あの時は今と違って共倒れしたなと思い返す。

でも、プレゼン前日と違うのはそれだけじゃなかった。

「大丈夫ですか?」

あの時、動揺してる自分が哀れになるぐらい平然としてた彼女の顔を覗き込むと。

「あっ、ありがと。大丈夫だから……」

超絶鈍感な俺でもわかるぐらい真っ赤で、あの日の俺以上にものすごく動揺してた。



『勘違いさせるようなことしないで下さい……』

拒絶された晩。

確かにそう言ったはずなのに一切学習することなく、相変わらず勘違いさせるような言動をする斜め上向き女に対して戸惑うしかなかった。

でも本当は……。

その表情に。その態度に。

まだ脈があるのかと。望みがあるのかと。

どこかで期待してたんだと思う。

君の気持ちに期待してたんだと思う。
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