彼女は予想の斜め上を行く
「――…と。勇人?ねぇ勇人ってばぁ!」
「……え?あっ…。ごめん…。なに?」
独り暮らしをする俺の部屋。
肩を並べて隣り合って座るソファーの上。
目の前には、小悪魔的上目遣いで俺を見上げる肉食系女子宮下莉緒。
「もうっ!最近ボーッとし過ぎぃ~」
頬を膨らませご機嫌斜めな肉食系女子を宥める為、肩を抱き寄せ頬や首筋に口付けながら。
「そんなことないよ?」と惚けてみせるけど。
本当は誰よりも自分の意識が、常日頃吹っ飛んでることを痛感してた。
それもこれも《あれ》のせいだ。
恨めしい視線を向けた先には、小さな引き出し。
その中には、『絶対に来て欲しいの』という言葉と共に手渡された《TOKYO ケーキショー》のチケット。
国内最大級洋菓子作品展への入場券と意味深な言葉は、ヘタレでビビりで鈍感な俺を常に悩ませ思慮させるんだ。