彼女は予想の斜め上を行く
「あっ!」
金本さんは、何かを思い出したかのように声をあげた。
俺は、その声にビクッと肩を震わせる。
「どうしたんすか?」
俺の質問などお構い無しに、携帯を取り出しいじり出す。
「今が七回の表。帰るまでに二十分かかるとして……」
携帯を見ながら、何やらボソボソと呟きだした。
しばらくボソボソ呟いた後、携帯を閉じ彼女は言った。
「やっぱ送ってもらえる?」
「へっ?」
「あたし、着替えてくる。この部屋で待ってて」
そう言って金本さんは、俺の返事も聞かずに机の上の百合を片付けて工房を出ていった。
俺は何が起こったのかわからず、その場に立ち尽くす。
……とりあえず、これはラッキー……だよな?
憧れの金本葵に、また一つ接近しつつあると思ってOKだよな?
こうして、突然のチャンスは訪れた。
男。
長野勇人。
このチャンス必ずものにしてみせる!!