彼女は予想の斜め上を行く
満塁ホームラン
日曜日。俺がいるのは……。
「ねぇ勇人。これ、どう思う?」
賑わいを見せる街中の通りに面した肉食系女子御用達洋服屋。
「いいんじゃね?似合ってる。可愛いよ」
胸の谷間が見えそうな肉食系女子曰く《THE·男受けワンピ》を体に当て、俺の反応を伺う莉緒に小さく笑みを浮かべ答えた。
「ホント?買っちゃおうかなぁ~」
「よろしかったら、ご試着なさいますか?」
その気になったカモを逃すまいと、すかさず声を掛ける店員と莉緒のやり取りをボーッと眺めていた。
「試着してくるね」という言葉を残して試着室に莉緒が消えたのを確認すると、店内に置かれた椅子に座り溜め息をついた。
溜め息の理由はわかってる。
ずっと俺を悩ませ思慮させ。
それが嫌で、引き出しにしまいこまれたまま。
頭の片隅にいつでもちらつき、今度は俺を上の空にさせる。
本日最終日を迎える国内最大級洋菓子作品展《TOKYO ケーキショー》のせいだ。