彼女は予想の斜め上を行く



ガタッッ

莉緒がケーキを食べ終える頃。自然と椅子から立ち上がっていた。

「……勇人?」

「ごめん。俺、用事思い出した」

不思議そうな表情でこちらを見つめる莉緒にそう告げ、伝票を引っ掴みレジへと急いだ。

素早く会計を済まる。

今から自宅へ戻ってチケットを取りに行く。

即効新幹線に乗れば、午後五時閉幕予定の会場へは何とか間に合うはず。

いや。絶対に間に合わせる。

店の外へ出て走り出そうとすると。

「はやとっっ!!」

背後から慌てたような俺を呼び止める声。

振り向くと、少し息を荒くした莉緒が立っていた。

「行かないでっ!」

「……莉緒?」

普段の小悪魔的上目使いなんて動作もせずに、必死な形相で俺にしがみつく莉緒に面食らった。

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