彼女は予想の斜め上を行く
「あたしその人にすごく感謝してる。でね、その人は……」

言葉の続きを耳を澄ませて聞きたいような。塞いで聞きたくないような。真逆で複雑な衝動に駆られる。

そんな俺なんてお構い無しに、斜め上を常に行く君はどんどん言葉を紡いでいくんだ。

「その人は長野君なんだよ」



次の言葉を聞いた瞬間。

雑踏とか喧騒とか人混みの中とか、全て忘れるぐらい。聴覚も視覚も君にだけ集中してた。



「あたし長野君が好き」



有り得ない。

だって君は……。

俺なんて手に負えない斜め上を行く美人で。中島先輩の彼女で。

何より確かにあの晩、俺のこと拒絶したわけで……。

信じちゃ駄目だ。

君の思わせ振りな態度に、勘違いして内角抉られて傷付けられるのはもう御免だ。

これ以上、ヘタレでビビりな俺を振り回さないで欲しい。
< 245 / 251 >

この作品をシェア

pagetop